自社の固定電話で、いま国際電話を使える状態になっているか。そう聞かれて、すぐに答えられるでしょうか。
事務所や店舗のビジネスフォンは、導入時に回線や主装置を設定したまま、日常業務では受発信だけを使い続けていることがあります。総務が電話まわりを兼任していても、契約しているサービスの範囲や、国際電話を利用する必要があるかまで確認する機会は多くありません。
2026年7月29日、総務省は特殊詐欺等の被害防止に向け、電気通信事業者に対する要請を行いました。その中には、固定電話の国際電話サービスや、AI等を活用した詐欺検知・警告サービスに関する項目も含まれています。利用者に新しい義務を課す文書ではありませんが、自社の電話契約を確認するきっかけとして読める内容です。
この記事でわかること
- 2026年7月29日の総務省の要請が誰に向けられたものか
- 固定電話に関して電気通信事業者へ求められた取組
- 契約や主装置・PBXについて会社側で確認できること
7月29日の要請は利用者への義務ではない
総務省が2026年7月29日に公表したのは、「特殊詐欺等の被害防止に向けた対策の一層の強化に関する要請」です。総務省は、一般社団法人電気通信事業者協会、一般社団法人テレコムサービス協会、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会、一般社団法人日本ケーブルテレビ連盟の4団体を通じて、電気通信事業者に文書による要請を行いました。
文書自体にも、この要請は行政手続法第2条第6号に規定する行政指導に該当し、同条第2号の処分には該当しないことが明記されています。各団体に対し、会員である電気通信事業者が要請事項へ着実に取り組むよう周知することを求める構成です。
したがって、この文書によって固定電話を利用している企業に新たな手続きや設定変更の義務が生じた、という意味ではありません。利用者側では、事業者に求められている対策を知ったうえで、自社の契約や利用状況を確認する材料として捉えるのが適切です。
背景にある被害額と政府の緊急対策
要請の背景には、特殊詐欺等の被害の増加があります。警察庁の確定値では、令和7年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺を合わせた被害総額は3,257億円となり、過去最多でした。
政府は「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」(令和7年4月22日犯罪対策閣僚会議決定)に基づき、官民一体となった取組を進めてきました。さらに令和8年5月には、携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律の一部を改正する法律が成立しています。
その後、2026年7月28日の犯罪対策閣僚会議で「詐欺及びストーカー被害拡大防止のための緊急対策」が決定されました。翌29日の総務省による要請は、この緊急対策に基づくものです。
要請には携帯電話の本人確認や詐欺電話等対策アプリに関する項目もありますが、固定電話を使う会社にとって直接確認しやすいのは、国際電話サービスなどに関する部分です。
固定電話については国際電話の利用休止の促進が挙がった
固定電話に関して注目したいのが、「電気通信サービスの不適正利用関連」に含まれる項目です。
まず、固定電話への国際電話サービスを悪用した詐欺等への対策として、契約変更時などの機会を捉えて必要性を確認することや、利用休止の体制を強化することなどが挙げられています。国際電話サービスの利用を真に必要としない利用者に対し、利用休止を促進するための措置を引き続き講ずるよう、電気通信事業者へ求めています。
また、固定電話の利用者に対して、AI等を活用した詐欺検知・警告サービスを分かりやすく周知し、普及に向けた取組を進めることも要請されています。
さらに、固定電話だけでなく携帯電話、SMS、メールを含めた特殊詐欺等の被害防止について、これまでの要請内容を踏まえて効果的な措置を講ずることも求められています。
会社側では契約と実際の利用を照らし合わせる
利用者側で最初に確認しやすいのは、「契約上使えるサービス」と「業務上必要なサービス」が一致しているかです。
たとえば国際電話について、現在利用できる契約になっているのか、実際の業務で国際電話を必要としているのかを社内で整理できます。契約内容が分からない場合や、不要と判断した国際電話を休止できるか確認したい場合は、契約している事業者へ問い合わせることになります。具体的な申込方法や窓口は契約によって異なるため、そこで確認することになります。
電話に関する案内が届いたときも、内容をそのまま読み流すのではなく、現在の契約や利用状況に関係するものかを見るという整理ができます。電話サービスの確認という意味では、光回線の営業電話で確認したいことも、契約内容を確認するときの参考になります。
記憶だけで「国際電話は使わないはず」と判断するのではなく、現在の契約状態と利用実態を一度照らし合わせておくことが出発点になります。
主装置やPBXも契約とは分けて確認する
ここからは総務省の要請文に記載された内容ではなく、ビジネスフォンを利用する会社で確認できる事項を一般的に整理したものです。
固定電話の契約を確認する際には、回線側のサービスだけでなく、社内にある主装置やPBXの設定も別の論点として扱えます。どのような発着信を業務で必要としているのか、現在の設定を誰が把握しているのかを整理し、不明な部分があれば導入時の資料や保守の窓口などを確認する、という進め方が考えられます。具体的な設定方法は機器や構成によって異なるため、ここで一律の手順を示すことはできません。
着信時に表示される情報について整理したい場合は、発信者番号表示のしくみも確認できます。
主装置やPBXの見直しを進める場合には、VoiceLine PBX も比較対象の一つとして整理できます。電話環境を見直す際は、現在必要としている機能や構成を先に整理しておくと、比較する条件をそろえやすくなります。構成や費用の比較は 比較・料金、個別のご相談は お問い合わせ からどうぞ。
まとめ
2026年7月29日の総務省の要請は、固定電話を利用する企業へ直接義務を課したものではありません。電気通信事業者団体を通じ、電気通信事業者に特殊詐欺等への対策強化を求めた行政指導です。その中で固定電話については、国際電話を必要としない利用者への利用休止の促進や、AI等を活用した詐欺検知・警告サービスの周知などが盛り込まれました。
利用者側でできるのは、まず自社の状態を把握することです。国際電話を利用できる契約なのか、実際の業務で必要なのか、主装置やPBXの設定を誰が把握しているのか。導入時のままになっている電話環境であれば、今回の要請を契機に、契約と利用実態を確認しておく意味があります。