主装置の更新を検討していると、「固定電話はもう減っている」という話を耳にすることがあります。資料に掲載された2021年3月末から2026年3月末まで、固定電話の契約数は減少しています。ただ、その数字を種類別に分けて見ると、減り方に差があることが分かります。
総務省は2026年7月10日、令和7年度第4四半期(2026年3月末)の「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」を公表しました(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。ここには、固定電話の契約数がどの種類の電話で構成されているかが示されています。
先に前提を1つ置いておきます。この資料は、電気通信事業者からの報告等をもとに契約数を取りまとめたものです(出典: 同上)。資料には法人・個人別の内訳が掲載されていないため、中小企業だけの状況として読むことはできません。以下の割合を、そのまま自社や取引先の比率として扱わないよう注意が必要です。
この記事でわかること
- 固定電話の契約数の内訳と、前年同期比の減少率が大きいのはどの種類か
- この統計を、主装置の更新検討でどこまで判断材料にできるか
- 更新前に自社側で確認しておきたい3つの点
固定電話4,698万のうち、3,552万は0ABJ-IP電話
総務省の資料によると、2026年3月末時点の固定電話の契約数は4,698万で、前年同期比2.8%減となっています(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。この資料でいう「固定電話」には、NTT東西の加入電話(ISDNを含み、0ABJ-IP電話を除く)、直収電話、0ABJ-IP電話、ワイヤレス固定電話が含まれます(出典: 同上)。
その内訳のうち、0ABJ-IP電話は3,552万、NTT東西の加入電話は1,051万です(出典: 同上)。残りは直収電話やワイヤレス固定電話などですが、この記事では構成の変化を説明するため、この主要2種類に絞って扱います。
固定電話の契約数に占める0ABJ-IP電話の割合は、資料のサービス別内訳のグラフで75.6%と示されています(3,552万÷4,698万からも約75.6%になります)。この割合は2021年3月末が67.5%で、資料に掲載された2021年3月末から2026年3月末までの各時点では上昇しています(出典: 同上)。
一般に、0ABJ-IP電話とは、03や06のような市外局番から始まる電話番号(0AB-J番号)を、IP網を使って提供するものを指し、ひかり電話がその代表例として説明されます。利用者から見た番号の形は従来の固定電話と変わりませんが、通っている経路は電話専用の交換網ではなくIP網です。この技術的な説明は総務省資料の記載ではなく、一般的な解説にあたります。
なお、この資料では0ABJ-IP電話について、利用されている番号数をもって契約数とみなす扱いになっています(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。利用番号数を契約数として扱った統計値であり、一般的な契約件数と同じ定義とは限らない点は、読むときの前提として押さえておきたいところです。
前年同期比の減少率は、従来の加入電話のほうが大きい
同じ資料の前年同期比を並べると、種類ごとの動きの差がはっきりします(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。
- 固定電話全体: 4,698万(前年同期比 2.8%減)
- 0ABJ-IP電話: 3,552万(前年同期比 0.9%減)
- NTT東西加入電話: 1,051万(前年同期比 8.3%減)
前年同期比の減少率は、NTT東西加入電話が8.3%、0ABJ-IP電話が0.9%で、加入電話のほうが大きくなっています。
このように、加入電話の減少と、固定電話に占める0ABJ-IP電話の構成比の上昇は、同じ期間に並行して起きています。ただし、この統計が示しているのは各時点の契約数であって、契約の移り変わりを追跡したものではありません。減った加入電話のうち何件がIP網の固定電話へ移ったのか、何件が電話そのものをやめたのかは、この資料からは分かりません。
050番号は0AB-J番号と別の動きをしている
同じ資料のIP電話の項目では、IP電話の利用番号数は4,357万(前年同期比2.4%減)で、その内訳は0AB-J番号が3,552万(前年同期比0.9%減)、050番号が805万(前年同期比8.8%減)と示されています(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。
050番号は、市外局番から始まる0AB-J番号とは別に集計されている、050から始まる番号です。0AB-J番号が0.9%減であるのに対し、050番号は8.8%減と、同じIP電話でも減り方に差が出ています。
主装置の更新検討で、この統計をどこまで使えるか
この資料から確認できるのは、固定電話の契約数として2026年3月末時点で4,698万が集計されており、そのうち0ABJ-IP電話が3,552万(利用番号数を契約数とみなした値)を占める、という状況です(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。
この集計から、自社に適した構成を決めることはできません。更新時には統計上の構成比ではなく、現在の外線種別や必要な機能、運用条件を確認したうえで、固定電話番号を社内でどう利用するかを検討します。代表的な選択肢は次の3つです。
- 従来型のビジネスフォン主装置を入れ替える
- 社内にIP-PBXを設置する
- クラウドPBXへ移す
既存設備との併用や段階的な移行を含め、実際の構成は条件に応じて変わります。
それぞれの仕組みの違いは ビジネスフォンとIP-PBXの違い|中小企業向けにやさしく解説 で整理しています。保守終了を伝えられている場合の進め方は 主装置が「保守終了」と言われたら? 買い替え以外の選択肢 で扱っています。
更新前に確認しておきたい3つの点
この統計からは自社の条件までは分かりません。実際の検討では、次の3点を自社側で確認しておくと進めやすくなります。
1. 今の外線が加入電話かIP電話か
一般に、外線の種別によって更新時に必要な機器や工事の確認事項が変わるため、自社の外線が加入電話(ISDNを含む)なのか、ひかり電話などの0ABJ-IP電話なのかを押さえておきます。これは総務省資料の記載ではなく、更新実務上の一般的な整理です。請求書や契約内容の書面で外線の種別を確認しておくと、見積もりの比較がしやすくなります。外線の選び方は ひかり電話オフィスタイプとは?中小企業の外線の選び方 で扱っています。
2. 今の電話番号を継続できるか
番号を変えずに使い続けられるかどうかは、移行の負担と社外への影響を大きく左右します。契約形態や移行先の構成によって条件が変わるため、電話番号はそのまま使える?PBX入れ替え前に確認すること で確認しておきたい点を整理しています。
3. 停電・回線障害時にどう振る舞うか
IP網を前提とする構成では、停電や回線障害時に通話できるかどうかが、非常電源、回線の冗長化、障害時転送などの備えによって変わります。停電時や回線障害時の動作は、停電・回線障害時に電話はどうなる?PBX導入前の確認項目 と クラウドPBXのデメリットと「向かないケース」 で扱っています。緊急通報の扱いとあわせて、契約前に確認しておきたい部分です。
まとめ
総務省の四半期データでは、固定電話の契約数は減少しているものの、その内訳では0ABJ-IP電話が75.6%を占め、前年同期比の減少率は従来の加入電話のほうが大きくなっていました(出典: 総務省、2026年7月10日公表)。ただし、資料には法人・個人別の内訳がなく、自社の更新方針をこの数字から決められるわけではありません。
自社の外線種別、内線の数、停電時の要件を確認したうえで、どの構成で受けるかを比べる、という順序になります。構成ごとに費用がどう見えるかは 比較・5年コスト に並べています。台数や設置場所を踏まえたご相談は お問い合わせ からどうぞ。
出典
- 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和7年度第4四半期(3月末))」2026年7月10日公表 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000278.html